転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


298 背中の皮はね、とってもすごかったんだよ



 僕たちが冒険者ギルドの買取カウンターに行くと、どうやら狩りに行っていた人たちが一番多く帰ってくる時間が終わった時だったらしくてちょうど静かになったとこだったみたい。

 だからお父さんは、買取カウンターでちょっと暇そうにしてたニールンドさんを見つけて話しかけたんだ。

「こんにちは」

「あら? カールフェルトさん。今日のポイズンフロッグ狩りは終わりですか?」

「ええ。なので買い取りお願いします」

 ポイズンフロッグをやっつけるのはギルドからの依頼だったよね?

 だから昨日までのポイズンフロッグはギルドに納品したんだけど、今日からはホントだったらやっつけなくてもいいはずの森の奥にいるやつだから、このポイズンフロッグは売ってもいいんだって。

 でもね、そのポイズンフロッグを入れてるマジックバッグはギルドから借りてるものだから、商業ギルドとかじゃなく全部冒険者ギルドに売ってねってギルドマスターのお爺さんとルルモアさんに言われてるんだ。

「では、こちらへ」

 やっつけたポイズンフロッグはそのままマジックバッグに入れてきたもんだから、いっぱいありすぎて買取のカウンターにそのまま出すわけにはいかないでしょ?

 だから昨日までとおんなじように、僕たちは買取カウンターの奥にある倉庫まで行ってマジックバッグから出したんだ。

「今日も結構ありますね。それにどのポイズンフロッグも状態がよくて、とても助かるわ」

 でね、それを1匹一匹丁寧に確認したニールリンドさんは、近くにいた体の大きいギルド職員さんに声をかけたんだよ。

「変異種と言うだけでなく、これだけ背中の皮がきれいなのは貴重なんだから、気を付けて解体してよ」

「解ってますよ。ギルドマスターからも、きつく言われてますからね」

 そしたらその職員さんは、近くにあった台車にポイズンフロッグを何匹か載っけて、奥へと運んでったんだ。

 その台車を見送りながら、僕はちょっと気になった事をニールンドさんに聞いてみる事にしたんだ。

「ねぇ、ニールンドさん」

「何かな? ルディーン君」

「ポイズンフロッグの背中の皮って、大事なの?」

 前にブルーフロッグやポイズンフロッグの皮は水袋にするとよく売れるって聞いてたから大事なのは解るよ。

 でも、それだったら背中じゃなくってもお腹のでもいいよね?

 なのにさっき、背中の皮がきれいなのはあんまりないから気を付けてねって、わざわざニールンドさんが言ってたもんだから、僕はなんでかなぁ? って思ったんだ。

「それはそうよ。あんなきれいな皮なら、きっとかなりいい寝具になるもの」

「寝具って、寝るのに使うのだよね? ポイズンフロッグの背中の皮は水袋にするんじゃないの?」

「そうよ。ポイズンフロッグだけじゃなく、ブルーフロッグの背中の皮だって加工したら上等なベッドの敷物になるのよ」

 ところがニールンドさんは、ポイズンフロッグの皮を水袋じゃなくって寝る時に使うマットレスに使うって言うんだもん。

 僕、それを聞いてすっごくびっくりしたんだ。

 だって僕、何度かやっつけたのを触ったけど、ポイズンフロッグの背中ってちょっと硬かったもん。

 そりゃあ木の板よりは柔らかいかもしれないけど、あれをベッドに敷くくらいなら他の動物や魔物の皮を敷いた方がいいと思うんだよね。

 だからニールンドさんにそう言ったんだけど、そしたらさっき加工すればって言ったでしょ? って笑ったんだ。

「確かにそのままだと硬くて使えなさそうに見えるかもしれないけど、ブルーフロッグの背中の皮は煮ると膨らんでとても柔らかくなるの。だからこれを使ったベッドは寝心地が素晴らしくて貴族様やお金持ちの人たちに大人気なのよ」

 動物や魔物の皮って、腐っちゃわないようになめすよね?

 でもその前に血とか脂、それに皮にくっついてるお肉とかを全部取っちゃうために下茹でするんだよね。

 ブルーフロッグやポイズンフロッグの背中の皮って、その下茹でをするとぷうって膨らんでとっても柔らかくなるんだってさ。

「だけどね、残念ながら使える皮がめったに手に入らないのよね」

「そうなの?」

「ええ。この皮はね、傷はもちろん、強い衝撃を受けても膨らまなくなってしまうのよ」

 ポイズンフロッグだけじゃなくブルーフロッグだって結構強いから、やっつけようと思ったらいっぱい叩いたり斬ったりしないとダメだよね?

 だから体の下になってるお腹の皮と違って、背中んとこの皮は大体傷だらけになっちゃうんだって。

 でもね、そうするとそう言うとこは煮ても膨らまずに硬いままになっちゃうそうなんだ。

 だからみんなが叩いて傷だらけになっちゃってるとデコボコになっちゃうから、ベッドに敷くマットレスには使えないんだってさ。

「私もよく解らないけど、革職人さんが言うには多分、この膨らむところが壊れる事で、体の中へのダメージを減らしているんじゃないかって話よ」

 ブルーフロッグってブラックボアみたいに頑丈じゃないし、一角ウサギみたいにすばしっこくないでしょ?

 だから自分の体を守るために、背中の皮がそんな風になってるんじゃないかなぁ? って革職人さんが言ってたそうなんだ。

 でもそうなってるせいで、冒険者さんたちがいっぱい狩ってくるのに、マットレスにできる皮はめったに入ってこないらしいんだ。

「そりゃあルディーン君のお母さんみたいに弓を使って一発で急所を射貫けるような人が狩ってくれたら今回みたいにきれいな皮が手に入るわよ? だけどブルーフロッグは数が多い分他の素材が安いでしょ? そんな腕を持っている人は、こんなの狩ってくれないのよ」

 ブルーフロッグって体がおっきいからお肉がいっぱい取れて、その上とっても美味しいから大人気だって言ってたでしょ?

 でもね、逆から言うとおっきくって街に持って帰るのが大変なのに、あんまり高く売れないって事なんだよね。

 だからブルーフロッグを1発の弓でやっつけられるような人だったら当然もっと高く売れる魔物をやっつけに行っちゃうから、きれいな背中の皮なんてほとんど手に入らないんだってさ。

「でも今回は全部きれいなまま。それもブルーフロッグよりぶ厚くて弾力があるポイズンフロッグの皮ですもの。これが入荷したと解れば、多分取り合いになるでしょうね」

 前の騒ぎん時は背中の皮が傷だらけて、商人さんたちはすっごく悲しそうだったんだって。

 だってポイズンフロッグの背中の皮はブルーフロッグのより3センチくらいぶ厚いから、もしマットレスにできたら大貴族様だって欲しがるそうだもん。

 なのに全部だめになっちゃったら、そりゃ残念だよね。

「まぁ、このうちの数枚は皇帝陛下への献上品や領主様やこの街の貴族様が手に入れるとして、あとは全部他の都市へと高値で売れていくでしょうね」

 そう言いながら笑うニールンドさん。

 そっか。ポイズンフロッグの背中の皮って、皇帝陛下まで欲しがるんだ。

 だったら、すごい狩人さんでも狩りそうなのにって思ったんだけど、

「いやいや、皮は高く売れるかもしれないけど、取れる魔石が一角ウサギより少し大きい程度ではやっぱり狩らないだろ」

 でもね、隣で聞いてたお父さんが、いっくら皮が高く売れても、魔物の素材の中で一番高い魔石が小さいから意味ないんだって。

「それに俺たちはルディーンがいるおかげで何の苦労もないが、ポイズンフロッグを狩ろうと思ったら、周りのブルーフロッグも相手しないといけないんだぞ? その上ポイズンフロッグの毒に対する備えもしなきゃダメと来てる」

 それを全部こなせるパーティーなら、ブラウンボアでも簡単に狩れるくらいの実力があるんだって。

 ブラウンボアなら魔石だけじゃなく、皮や牙だってポイズンフロッグの背中の皮より高く売れるんだからわざわざ狩ろうなんてやっぱり思わないよってお父さんは言うんだよね。

「ええ。だからルディーン君やカールフェルトさんがポイズンフロッグを書てくれて、お姉さんは大助かりよ」

「そっか。じゃあ、もっと頑張って狩ってこないとね」

 ニールンドさんに褒められた僕は、早く幻獣をやっつけて残りのポイズンフロッグもみんなやっつけるんだって、両手をぎゅってしてふんすと気合を入れたんだ。



 ブルーフロッグやポイズンフロッグの背中の皮は、煮たらスポンジマットレスになってしまう不思議素材でした。

 でも傷があったり、強いダメージを受けていたら膨らまないと言う特殊仕様です。

 まぁ簡単に手に入るようならすでに世の中に出回っているだろうし、当然グランリルの村にもあったでしょうからルディーン君だって知っていたでしょうね。

 そしてそんな素材があるのなら、きっと魔法陣の描き方を覚える前にそれを使ってお尻の痛くない馬車を完成させていたことでしょう。

 なにせブルーフロッグの皮は水を通さないので、雨が降ったらgyしょぐ所になるからクッションをおけないと言われた御者席にも使えるくらい便利なものなんですからw


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